| 『普通に豊か』 |
皆様お元気ですか。
久しぶりに北海道に行ってきました。
16日に札幌を出発して21日に函館着。車を飛ばせば一日で着くところを6日間かけました。というよりかかりました。
というのも、自転車で日本縦断をしようとしている19歳の女の子をドキュメント撮影していたからです。札幌ー千歳ー苫小牧ー長万部ー森ー函館。
途中には険しい峠もあり、朝から必死に走っても一日で行ける距離は知れているのでした。車なら1時間で行ける距離がなんと一日かかってしまう。なんだか不思議な感覚の6日間でした。
日本は広い、というよりも、歩くように地面から丹念に見ると、通り過ぎていくように見える風景の中に「普通の人が普通に生きている」ことが、改めて実感されるのです。
彼女は地雷廃絶を訴え、各地で『地雷教室』を開きながら旅をしています。150日間かけて、沖縄まで行く予定なのです。泊まるところも決まっていません。資金も豊富ではありません。彼女の所持金はアルバイトで貯めた約15万円。一日1000円が生活費です。今の日本で、宿泊代も含めて一日1000円、無謀というべきでしょう。野宿も覚悟でした。
しかしこの6日間、おそらく彼女は一日1000円も使いませんでした。
つかれきってたどり着いたライダーハウスの主人は、彼女の趣旨に賛同して宿代500円をタダにしてくれました。近くの温泉にも連れて行ってくれました。いちばん安いパン(120円)を迷いながら買った店では、おまけにパンも耳をごっそりくれました。3日間食べつなぎました。
まだ寒い北海道、震えながらたどり着いた岬では、土産物屋のおばちゃんが温かいお茶とフードのついたアノラックをくれました。
また、やっとたどり着いたさびれた漁村では、釣り宿の主人が「客は誰もいないから泊まって行っていいよ」とこれまたタダで泊めてくれ、食堂で帆立貝をたらふく振る舞ってくれ、奥さんは次の日のためにおにぎりを作ってくれました。街道でトウモロコシを売っていたおじさんも気前よく「持って行け」と撮影している私にまでくれました。
出会う多くの無名の人々がみな優しく一人の少女に接してくれたのです。
20キロ以上ある荷物を載せ、必死に自転車をこぐ彼女を撮影しながら私は「何だ、普通に豊かだな」と、妙な感動にとらわれました。
世に言う不景気風は間違いなく北海道という地方にも吹き荒れていました。
でも、彼女が出会った一人一人を見ると、決して裕福でも贅沢ではないが、豊かな感じがしたのです。このささやかだが、確実な豊かさは今この国を覆っている「国家主義」とは無縁のもののように思えました。むしろこの「普通に豊か」な人々を切り捨てる、競争に負けた敗者として低い階層の人間としてみなす、そんな風潮がこの国を覆っているような気がしました。誰がそれを望んでいるのでしょうか。
彼女がゆっくり走っている間に「有事法制」が衆院を通過しました。大手銀行を救うために税金の注入が決まりました。
経済大国でなくてはいけない。脅威から国民を守るために軍事大国でなくてはいけない。、国際競争に勝つためにアメリカと同じような強国にならなくてはいけない。アメリカと同じように市民を勝者と敗者に分ける階級社会が先進国だと信じる。まず「国」、「国」「国」「国」。「国」のためには国民は犠牲になってもらう。
競争にうち勝たないと生きていけない社会、勝者しか生き残ってはいけないような社会が、本当に私たちが望む社会なのでしょうか。福祉を切り捨ててまで守る「国益」とは何なのでしょうか。
大国でなくても人々が共存していける社会、そちらのほうが「民益」ではないのか。
それをささやかに望む人々がいる。そうした人々が一人の少女に声援を送る。こっちのほうがまっとうだな、明らかに正しいな。
そんな当たり前のことを、19歳・上 泰歩(うえやすほ)君のゆったり自転車旅に付き合いながら思ったのでした。
しかし、いい年こいてライダーハウスに寝袋で寝るのははっきり言って疲れました。
彼女の旅日記はNGOピースボートのHPで毎日交信されています。
まだ放送の目途は立っていないのですが(いつものことで)、彼女の旅の記録はできる限り撮り続けようと思っています。
と同時に、5月末までの武力停止がロードマップの第一段階と言われるパレスチナも気になるので、1週間ばかり出かけてこようと思っています。
その報告はまた。
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