| 『現場に行ってこそ』 |
皆様お元気ですか?
新年は見るべきテレビ番組もなく、片岡礼子出演作品をビデオで見ていた毎日でした。『二十歳の微熱』『愛の新世界』『鬼火』『チンピラ』など。
どこにも出かけないジャーナリストや識者やキャスターたちの、もっともらしい『今年を占う』『今年を予想する』を見たりするより、とても有意義でした。行かないのか、行けないのか。きな臭い国際情勢の中で、引きこもりを決め込んでいるのは、きわめて日本らしいとも思えます。
北朝鮮もすっかり遠くなった感があります。
思えば、和解のチャンスはあった、と思います。
小泉訪朝。拉致被害者の一時帰国。閉ざされた国の門を開くチャンスはあの時にあったのです。
それがどうしたのでしょう。国務次官補のジム・ケリーが平壌へ行き『核疑惑』を出したとたん、拉致に関する国民世論の舞い上がりと相乗効果となり、とにかく酷い国だ、許すまじの大合唱。
原油もやるな、食料もやるな、あの国をやっつけろ。国交正常化なんてもってのほかだ。
その結果。キム・ヘギョンちゃん、ジェンキンスさんインタビュー後は、何を吠えようとも、あちらは無回答。完全にシカトを決め込んでしまいました。
拉致問題はとっくに解決。それよりもNPT脱退だ。核兵器を作るぞ、といじめられっ子は、いつものようにやけくそ気味に開き直ってしまいました。
これが、私たちの望んだことだったのでしょうか。
官・民・マスコミがそろって、あの国との回路を閉ざしてしまった。
今回のNPT脱退も、冷静に見ると、アメリカが仕掛けた政治ゲームの結果だと思えます。アジアの国が、過去の相互不信を乗り越えて、和解の道を選ぶことは、どうやらアメリカにとっては面白くないのです。
いつまでも敵対していて欲しい。そのために周到に準備された『今ここにある危機』のような気がしてなりません。これをアメリカによる「悪の枢軸国化」と呼びたい。
アメリカに拉致被害者に対する思いやりがあるとは微塵も思えません。
その国家戦略に乗せられて、誹謗するばかりで、残された家族や、死亡原因の究明からますます現実を遠ざけるような運動や報道はいったい誰のためなのでしょう。
それは、結果としてアメリカの国家戦略のプロパガンダに協力しているとしか思えないのです。
脱北者を取材することは重要です。知られざるあの国の実情が浮かび上がってくる。
国家の犠牲者を描くことは重要です。国家の犯罪を暴くことはマスコミの使命です。
それは北朝鮮に限りません。
しかし、彼らを亡命に導くことはしなくてはならないことでしょうか。僕は、瀋陽の日本領事館駆け込み事件のときに、ある違和感を感じました。果たしてあのスクープ映像は何をもたらすのか。
それは、今も10万人を越える脱北者への中国当局の厳しい取り締まりを促すだけではないのか、と。そちらに対する配慮や戦略を果たして構築していたのかと。
事実、延辺あたりでは、それまで見て見ぬ振りを決め込んでいた中国公安が、『面子』で取締りを強化しているといいます。何年も行っている友人の中国人ジャーナリストは、瀋陽事件以後の脱北者の窮状を怒りを込めて語っていました。
日本にいる不法滞在者たちは、今では日本の基幹産業を支える重要な労働者です。入国管理官たちもいることは知っている。でも特に犯罪を犯したりしないのであれば、いたってかまわない。誰かがチクルと嫌々取り締まりに出かけるのが実情です。
中国だって同じだったと思います。
中国東北部は朝鮮族自治区です。そこに、朝鮮から逃げ出した人がかくまわれて住んでいる。ただ、本国よりも食べ物があったり、わずかな仕事があったりするからであって、ことさら韓国に亡命しようという反北朝鮮国家の運動家でも政治意識の高い人間ばかりでもない。少しでも安全にただ人間として生きたい。そのためには、偽造の身分証明書を作ってでも中国人としてあの広い国の中でひっそりと暮らしたい。そう思っている人がほとんどではないかと思うのです。人間は国家なんかより、自分が安全に生きることのほうが大切なのです。
それを亡命させる。大使館にデモさせる。マスコミに乗せる。亡命させて、脱出してきた国の酷さを語らせる。反北朝鮮キャンペーンに利用する。
これはジャーナリズムでしょうか。または人道支援でしょうか。その人たちの将来の身の安全や、亡命まで考えていない多くの脱北者たちに対してどう責任が取れるのでしょうか。
結果として、韓国の反北朝鮮勢力とアメリカの政治戦略に利用されている、またはそれを補完していることにならないでしょうか。
撃つべきは、北朝鮮も含めた、そうした人道とも人権とも無縁な、『国家』という醜悪なモノの実像ではないでしょうか。
回路は閉ざされました。政治もマスコミも海峡を挟んで立ちすくんでいます。民間NGOに何かが出来るでしょうか。
その可能性は皆無とは言えません。
というわけで、明日から僕としては3回目となる北朝鮮にピースボートの連中と行ってきます。過去10年間、北朝鮮と民間交流を行ってきたピースボートもまた、拉致問題では騙され、裏切られました。その抗議もこめて、また、それでも『和解』の道があることを信じて彼らは訪朝します。
何が報道できるかは分かりませんが、とにかく行くことが大切だと思っています。現場に行くこと、それはジャーナリズムの原則です。もっとも僕の場合は、ただ単に現場が好きというだけなのですが。今年も『現場に行ってこそ』を体の続く限り実行したいと考えています。
昨年10月から父が食道癌のために入院していました。かなりの進行癌で,81歳という高齢でもあったので一族で心配していましたが、手術は成功、合併症も克服、1月11日に無事退院しました。励ましをいただいた方も多くいました。この場でご報告、感謝を述べたいと思います。ある人が、「お前は幸せだな」と言いましたが、まったくそう思っています。
と、今日、深作欣二監督の訃報を聞きました。深作監督はかつていくつかメイキングを作ったこともあって、思い入れの深い監督でした。
戦争で死に損なって、残りはおまけの人生だと言った深作さんのご冥福を祈りつつ。
いつかぎらぎらする日、に向かって。
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